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萎縮性胃炎・ピロリ菌

 

 

萎縮性胃炎とヘリコバクターピロリ感染症

ヘリコバクターピロリ(H. pylori・ピロリ菌)は胃粘膜に住みつく細菌で、 慢性胃炎・胃潰瘍・萎縮性胃炎を引き起こし、胃がんの最大の危険因子です。
除菌治療により発がんリスクは大幅に低下しますが、ゼロにはなりません。 除菌後も萎縮や腸上皮化生が残る場合は、定期的な胃カメラでの経過観察が重要です。

まずはここだけ押さえればOK

  • ピロリ菌は慢性胃炎→萎縮性胃炎を起こし、胃がんリスクを高める
  • 感染は主に幼少期の家族内経口感染で成立する。
  • 2024年の最新ガイドラインでは、一次除菌にP-CAB(ボノプラザン)ベースの3剤療法を推奨。
  • 除菌でリスクは大きく下がるがゼロにはならない。萎縮が強いほど除菌後も定期内視鏡が重要。
  • 黒色便・吐血・強い持続痛・体重減少は早めに受診。

疾患概要

  • ピロリ菌は胃粘膜に長期感染し、慢性胃炎 → 萎縮性胃炎 → 腸上皮化生へと段階的に進行させます。
  • この変化(とくに萎縮・腸上皮化生)は胃がんの発生母地となるため、早期診断と除菌が重要です。
  • 胃・十二指腸潰瘍の主な原因でもあり、除菌により潰瘍の再発が大幅に抑制されます。
ポイント

除菌でリスクは大きく下がりますがゼロではありません。萎縮・腸上皮化生が残る場合は、除菌後も内視鏡によるフォローが必要です。

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ピロリ菌はウレアーゼという酵素で胃酸を中和しながら生存します。除菌治療をしない限り、感染は自然に消えることはほぼありません。長期感染によって胃粘膜は慢性炎症→萎縮→腸上皮化生と変化し、この変化は元に戻りにくいことが除菌後もリスクが残る理由です。

ピロリ菌感染と関連する疾患は胃がん・潰瘍だけでなく、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)鉄欠乏性貧血なども含まれ、これらも除菌の適応となります。

感染の広がり

  • 日本では世代が上がるほど感染率が高い傾向があります。
  • 衛生環境の改善や除菌治療の普及により、若年層での感染率は低下してきています。
  • 感染していても多くは無症状のため、気づかないまま経過することが少なくありません。
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高齢層 > 中年層 > 若年層の順に感染率が高い傾向があります。これは幼少期の生活環境(衛生状態・家族構成など)に大きく左右されるためです。健診や人間ドックで偶然発見されるケースも多く、症状がなくても感染していることがあります。

感染経路

  • 主に幼少期(6歳頃まで)の経口感染で成立します。
  • 家族内での口移しや食器の共有などが感染経路となります。
  • 免疫が発達した成人での新規感染は非常に稀です。
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  • 幼少期は免疫が未発達なため、ピロリ菌が感染・定着しやすい時期です。
  • 成人は感染しても免疫細胞が撃退し、一過性感染で終わることがほとんどです。
  • 成人での新規感染はまれですが、衛生環境が悪い地域への渡航歴などで起こり得ます。
  • 日本国内での除菌後の再感染率は年間0.1〜0.5%程度と非常に低いとされています。

症状

  • 多くは無症状
  • みぞおちの痛み・不快感
  • 胃もたれ・食欲低下
  • 潰瘍由来の痛みや出血
  • 黒色便・貧血(潰瘍合併時)
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ピロリ菌感染自体はほとんどの場合無症状です。胃・十二指腸潰瘍を合併すると、上腹部痛(特に空腹時・夜間)・黒色便・貧血などが出現することがあります。萎縮性胃炎が進行しても症状が出にくいことが多く、「症状がないから大丈夫」とは言えないのがピロリ菌感染の特徴です。

検査・診断

  • 内視鏡で萎縮・腸上皮化生の程度・胃がんの有無を評価します。
  • 感染の診断には尿素呼気試験・便中抗原・内視鏡生検などを使い分けます。
  • 除菌判定は治療終了から4週間以降に実施します(検査の種類によって休薬の要否が異なります)。
2024年ガイドライン 改訂ポイント

尿素呼気試験(UBT)・迅速ウレアーゼ試験・血清ペプシノゲン検査はPPI/P-CABの休薬が必要です。一方、便中抗原・血清抗体・核酸増幅法・培養法・鏡検法はPPIを内服したまま実施できます。

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内視鏡検査(胃カメラ)

  • 萎縮・腸上皮化生の範囲と程度を評価
  • 胃がん・潰瘍・その他病変の有無を確認
  • 必要に応じて生検(組織検査)でピロリ菌感染を確認
  • 除菌前に必ず「慢性胃炎」の内視鏡診断が必要(保険適用要件)

非侵襲的な感染診断法

  • 尿素呼気試験(UBT):精度が高く除菌判定にも使用。PPI/P-CAB休薬が必要
  • 便中抗原検査:採便のみで検査可能。PPIの休薬不要
  • 血清抗体検査:採血のみ。ただし除菌後も陽性が続くため、除菌判定には不向き。血清抗体陽性のみで除菌治療を行わないことが推奨されています

※ 薬剤感受性試験(除菌前)は保険適用で実施可能です。どの抗菌薬が効くかを事前に調べることで、除菌成功率の向上が期待できます。

治療(除菌)

  • 標準はP-CAB(ボノプラザン)+抗菌薬2種を7日間内服する一次除菌療法。
  • 2024年改訂ガイドラインでは、PPIよりP-CABベースの方が除菌成功率が高いため、P-CABを推奨。
  • 一次除菌に失敗した場合は抗菌薬を変更した二次除菌を行います(成功率は一次・二次合わせて約95〜99%)。
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一次除菌療法(7日間)

  • P-CAB(ボノプラザン)または PPI + アモキシシリン + クラリスロマイシン
  • 2024年ガイドラインではP-CABベースの方が除菌率が高いとして推奨
  • クラリスロマイシン耐性菌の増加が課題。事前の薬剤感受性試験でレジメン選択の最適化が可能
  • 飲み忘れなく7日間しっかり内服することが大切です

二次除菌・その後

  • 一次除菌不成功の場合はクラリスロマイシンをメトロニダゾールに変更して二次除菌
  • 二次除菌も保険適用(一次・二次合わせた成功率は約95〜99%)
  • 三次以降の除菌は保険適用外(自費)となる場合があります。ご相談ください
  • アレルギーなど特殊な状況では、薬剤感受性に基づいて個別に対応します

除菌判定は治療終了から4週間以降に尿素呼気試験または便中抗原検査で行います。

除菌後のフォロー・胃がん予防

  • 除菌で胃がんリスクは大幅に低下しますが、ゼロにはなりません
  • 除菌後も萎縮・腸上皮化生は元に戻らないため、リスクに応じた定期内視鏡が重要です。
  • 除菌後に発見される胃がんは発見が難しいことがあるため、専門医による胃カメラが推奨されます。
内視鏡フォローの目安

萎縮や腸上皮化生が強い方・胃潰瘍歴がある方・早期胃がんの内視鏡治療(ESD)後の方などは年1回程度の内視鏡フォローが推奨されます。萎縮が軽度の方でも2〜3年に1回程度を目安に受診をおすすめします。頻度は個人の状況に応じて相談しながら決めます。

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除菌後胃がんの特徴として、平坦・陥凹型で発見しにくいことや、除菌後10年以上経過してから発見されるケースがあることが知られています。内視鏡検査を年1回継続することで、進行前の早期発見・内視鏡治療(ESD)による胃の温存が可能になります。

とくにリスクが高い方:

  • 高齢男性(除菌時に高齢であるほど残存リスクが高い)
  • 胃体部に高度の萎縮・腸上皮化生がある
  • 胃潰瘍の既往、または早期胃がんのESD治療歴
  • 胃がんの家族歴(とくに一親等)

除菌後の生活指導としては以下が有効です:

  • 禁煙(喫煙は胃がんリスクを約2倍に上げます)
  • 節酒・減塩(塩分の摂りすぎは胃粘膜を傷つけます)
  • 野菜・果物の摂取(抗酸化物質が胃粘膜保護に役立ちます)
  • 適正体重の維持

よくあるご質問

除菌したら胃がんにはなりませんか?

除菌でリスクは大幅に低下しますが、ゼロにはなりません。とくに除菌前から萎縮性胃炎や腸上皮化生がある場合は、これらの変化が元に戻らないため除菌後もリスクが残ります。定期的な胃カメラによる監視が最も大切です。

除菌の判定はいつ・どの検査で行いますか?

除菌薬の内服終了から4週間以上あけた後に、尿素呼気試験(UBT)または便中抗原検査で判定します。PPIやP-CABを内服中の場合、UBTと迅速ウレアーゼ試験は休薬が必要ですが、便中抗原検査はPPIを内服したまま実施できます。

血清抗体で陽性と言われましたが、これだけで除菌できますか?

いいえ。血清抗体検査は現在の感染を必ずしも反映しません(除菌後や過去の感染でも陽性が続くことがあります)。2024年の最新ガイドラインでは、「血清抗体陽性のみで除菌治療を行わないこと」が強く推奨されています。まず内視鏡や他の検査で確認が必要です。

一次除菌に失敗したらどうなりますか?

抗菌薬の種類を変えた二次除菌を行います(保険適用)。一次・二次除菌を合わせた成功率は約95〜99%と高率です。三次除菌以降は保険適用外となる場合がありますが、薬剤感受性試験の結果などをもとに対応を相談します。

除菌したら再感染しますか?

日本では再感染率は年間0.1〜0.5%程度と非常に低いとされています。ただしゼロではなく、衛生環境が悪い地域への長期滞在などでは注意が必要です。上腹部症状が続く場合はご相談ください。

除菌後に胃カメラを受けるとき、何年ごとにすればよいですか?

胃粘膜の状態(萎縮・腸上皮化生の程度)と個人のリスクによって異なります。萎縮が強い方や胃潰瘍・ESD後の方には年1回程度、萎縮が軽度の方でも2〜3年に1回の胃カメラが目安です。最適な間隔は診察時にご相談します。

症状がありませんが除菌した方がよいですか?

はい。ピロリ菌感染は無症状のまま胃粘膜のダメージが進行することがあります。若いうちに除菌するほど胃がん予防効果が高く、高齢になってからでも潰瘍予防などの効果があります。感染が確認されたら、症状の有無にかかわらず除菌をおすすめしています。

除菌後に逆流性食道炎が悪化すると聞きましたが?

除菌後に胃酸分泌が回復し、一時的に逆流性食道炎(胸やけ)が出やすくなることが知られています。ただし多くの場合は軽症かつ一過性で、長期的には落ち着くことが多いです。症状が続く場合は胃酸を抑える薬で対応できますので、ご相談ください。

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