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潰瘍性大腸炎・クローン病

 

 

炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病)

炎症性腸疾患(IBD)は潰瘍性大腸炎(UC)クローン病(CD)の総称で、いずれも指定難病です。
共通して慢性的な下痢・血便・腹痛・体重減少・発熱などがみられますが、 治療しなくても一時的に症状が落ち着くことがあり診断が遅れがちです。
IBDは早期の診断・治療が重要です。心当たりの症状やご不安があれば、お気軽にご相談ください。

まずはここだけ押さえればOK

  • IBDは潰瘍性大腸炎(UC)クローン病(CD)の2疾患の総称。いずれも指定難病。
  • どちらも再燃と寛解を繰り返すため、症状が落ち着いていても長期管理が必要。
  • 治療目標は臨床的寛解+内視鏡的寛解(粘膜治癒)の達成・維持(Treat to Target)。
  • 長期罹患では大腸がんのリスクが上昇するため、定期的な内視鏡サーベイランスが重要。
  • 重症/難治/入院が必要な場合は速やかに専門施設へ連携します。

疾患概要

  • UCは大腸粘膜の連続性炎症(直腸から口側へ)
  • CDは全消化管の非連続・全層性炎症で狭窄/瘻孔に注意。
  • 治療は重症度で段階的に選択し、目標は粘膜治癒(内視鏡的寛解)の維持
Treat to Target(T2T)とは

IBDのガイドラインでは「症状が落ち着いた(臨床的寛解)」だけでなく、内視鏡で炎症がない状態(内視鏡的寛解・粘膜治癒)を達成・維持することを治療目標(Treat to Target)として重視しています。粘膜治癒を達成することで再燃・入院・手術・がん化のリスクが低下します。

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  • 潰瘍性大腸炎(UC):大腸粘膜に炎症が起こり、直腸から連続的に口側へ広がります。
  • クローン病(CD):口〜肛門まで全消化管に起こり得る非連続性・全層性の炎症。狭窄・穿孔・瘻孔のリスクがあります。
  • 若年〜高齢まで発症。再燃と寛解を繰り返すため長期管理が重要です。
  • 治療は5-ASA・ステロイド・免疫調整薬・生物学的製剤・分子標的薬を重症度と既往に応じて段階的に選択します。

「症状が落ち着いた=治った」ではありません。粘膜治癒を確認し、再燃を予防する治療と生活調整を続けることが大切です。

潰瘍性大腸炎(UC)とは

  • 大腸粘膜を直腸から連続的に侵し、びらんや潰瘍を形成する炎症性疾患。
  • 罹患範囲で直腸炎型・左側大腸炎型・全大腸炎型などに分類される。
  • 重症度は軽症・中等症・重症・劇症に分類。
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病変が直腸にとどまる「直腸炎型」から大腸全体に及ぶ「全大腸炎型」まで罹患範囲は様々です。罹患範囲と重症度により治療薬や投与経路(内服・注腸・坐薬)を組み合わせます。再燃と寛解を繰り返す経過をたどることが多く、長期管理が必要です。

潰瘍性大腸炎の症状

  • 主症状は腹痛・下痢・血便(粘血便)
  • 急激に悪化する重症例では全身症状(発熱・貧血・体重減少)も。
  • 腸外合併症(関節痛・口内炎・皮膚炎・眼症状等)を合併することも。
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  • 腹痛(特に排便前)
  • 下痢・粘血便・血便
  • 発熱
  • 体重減少・食欲不振
  • 貧血・だるさ

症状の強さは個人差が大きく、軽症では1日数回の軟便程度から、劇症では命に関わる状態まで幅広い経過をとります。寛解期でも炎症が残っている場合は再燃リスクが高いため、定期評価が必要です。

潰瘍性大腸炎の診断

  • 症状の経過+血液検査で炎症(CRP・白血球)・貧血・栄養状態を評価。
  • 大腸カメラ+病理検査で炎症の範囲・重症度を確認して確定診断。
  • 便検査:感染性腸炎(カンピロバクター・C.difficile等)を除外。
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  • 便中カルプロテクチン:腸の炎症を非侵襲的に評価できる便バイオマーカー。寛解期の疾患活動性評価にも有用。
  • 内視鏡では炎症の連続性・深さ・粘膜の状態を確認し、生検で組織学的評価を行います。
  • 感染性腸炎はUCと症状が類似するため、便培養・C.difficile検査などで鑑別することが重要です。

潰瘍性大腸炎の治療

  • 軽症〜中等症:5-ASA製剤(内服+局所療法)が基本。
  • 中等症:効果不十分ならステロイド短期使用または血球成分除去療法(CAP)
  • 難治・重症:生物学的製剤・JAK阻害薬・S1P受容体調節薬などを選択。
  • 維持療法:ステロイドは使用しない。5-ASA・生物学的製剤等で維持。
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軽症〜中等症(基本治療)

  • 5-アミノサリチル酸(5-ASA)製剤:メサラジン等。飲み薬に加え、病変範囲に合わせて注腸薬・坐薬を併用。直腸炎型では局所製剤が特に有効。
  • 血球成分除去療法(CAP):炎症を引き起こす活性化した白血球を体外で除去する治療法。ステロイドを使いたくない場合や妊娠中にも選択肢となります。週2回以上の強化CAP療法で早期に寛解率を向上できます。

ステロイド・免疫調整薬

  • ステロイド(プレドニゾロン等):中等症以上で寛解導入に短期使用。副作用のため維持療法には用いません。
  • アザチオプリン(チオプリン製剤):ステロイド依存例の維持療法に使用。効果発現に1〜2か月を要します。使用前にNUDT15遺伝子検査が推奨されます(重篤な白血球減少の予測)。
  • タクロリムス:重症・ステロイド抵抗例の寛解導入に使用。

難治・重症例(生物学的製剤・分子標的薬)

  • 抗TNF-α抗体(インフリキシマブ・アダリムマブ・ゴリムマブ)
  • 抗α4β7インテグリン抗体(ベドリズマブ):腸管選択性が高い
  • 抗IL-12/23p40抗体(ウステキヌマブ)
  • JAK阻害薬(トファシチニブ・フィルゴチニブ・ウパダシチニブ):内服薬
  • S1P受容体調節薬・オザニモド(ゼポジア):2024年12月承認・2025年3月発売の新しい経口治療薬。既存治療で効果不十分な中等症〜重症UCに適応。1日1回内服で、新規作用機序(リンパ球の腸への浸潤を抑制)。

維持療法の原則

  • 5-ASA継続が基本(UC関連大腸がんのリスク低減効果もある)。
  • ステロイドは維持に使用しない(骨粗しょう症・糖尿病・感染症等の副作用リスク)。
  • 生物学的製剤・分子標的薬で寛解維持を図る場合は定期的な注射・採血が必要。
  • 「症状が落ち着いた」からといって自己判断で薬を中止しないこと。再燃リスクが高まります。

潰瘍性大腸炎の外科治療

  • 劇症・大量出血・穿孔・薬物療法で制御困難な難治例では手術を検討
  • 長期罹患によるUC関連大腸がんが生じた場合も手術適応となる。
  • 代表的術式は大腸(亜)全摘+回腸嚢肛門吻合術。自然肛門を温存できる。
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手術後に回腸嚢に炎症が起こる「回腸嚢炎(pouchitis)」が合併することがあります。多くは抗菌薬で治療できますが、難治性のものには生物学的製剤が検討されます。手術適応の判断と術後管理は専門施設で行います。

クローン病(CD)とは

  • 口から肛門まで全消化管に炎症が起こり得る。小腸・大腸に多い。
  • 非連続性・全層性の炎症が特徴。狭窄・穿孔・瘻孔の合併に注意。
  • 10〜20歳代の若年発症が多い。喫煙はリスク因子で再燃の原因となる。
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炎症の部位は小腸のみ・大腸のみ・小腸+大腸など様々です。炎症が深層まで及ぶため、長期の経過で腸管が細くなる「狭窄」、腸管に穴が開く「穿孔」、腸と他の臓器・皮膚がつながる「瘻孔」、膿がたまる「膿瘍」などの合併症が生じます。肛門周囲病変(痔ろう・膿瘍など)がCDの初発症状となることもあり、「お腹が弱い体質」「ただの痔」と見過ごされ診断が遅れることがあります。

クローン病の症状

  • 主症状は腹痛(特に右下腹部)・慢性下痢・発熱・体重減少
  • 血便はUCより少なく、痔ろうが診断の手がかりになることも。
  • 腸外合併症として関節炎・口内炎・皮膚炎・眼症状などを合併することも。
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  • 腹痛(右下腹部)
  • 慢性下痢(血便は少ない)
  • 発熱
  • 体重減少・栄養障害
  • 肛門周囲病変(痔ろう等)

UCと比較して血便が少なく、慢性的な腹痛・下痢・発熱・体重減少が続く場合にCDを疑います。若い年齢での繰り返す肛門周囲の問題(痔ろう・膿瘍)がCDの最初のサインであることもあります。

クローン病の診断

  • 血液検査:炎症・貧血・栄養(アルブミン・鉄・ビタミン等)を評価。
  • 内視鏡(上部・下部)+病理:縦走潰瘍・敷石像・非連続性病変を確認。
  • 小腸評価には小腸造影・CT/MRIエンテログラフィ・カプセル内視鏡が必要(連携施設で実施)。
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  • CDに特徴的な内視鏡所見:縦走潰瘍・敷石像・飛び石状病変(非連続性)・アフタ性潰瘍。
  • 小腸病変の評価が診断と病勢把握に重要。小腸カメラ(バルーン内視鏡・カプセル内視鏡)・CTエンテログラフィ・MRIエンテログラフィを連携施設で実施します。
  • 便培養で感染性腸炎(結核性腸炎を含む)を除外することが重要です。
  • NUDT15遺伝子検査はチオプリン製剤(アザチオプリン)使用前に推奨されます(重篤な白血球減少の予測)。

クローン病の治療

  • 栄養療法:炎症を鎮め腸を休ませる。寛解導入・維持に有効。
  • 病勢に応じステロイド→免疫調整薬→生物学的製剤・分子標的薬を選択。
  • 合併症(狭窄・瘻孔・膿瘍)では外科治療・内視鏡的拡張を検討。
  • 禁煙は最も重要な生活習慣の改善(喫煙は再燃・合併症リスクを上昇させる)。
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栄養療法・基本治療

  • 成分栄養療法(ED)・半消化態栄養療法(PEN):腸への刺激を減らし炎症を鎮める。特に小児や軽症〜中等症CDで有効。在宅での経管栄養(夜間経管)も活用。
  • ステロイド(プレドニゾロン・ブデソニド):寛解導入に有効だが維持には使用しない。
  • アザチオプリン(チオプリン):維持療法・生物学的製剤との併用(抗薬物抗体の産生抑制)。

生物学的製剤・分子標的薬

  • 抗TNF-α抗体(インフリキシマブ・アダリムマブ):CDに広く使用。瘻孔病変にも有効。
  • 抗IL-12/23p40抗体(ウステキヌマブ)
  • 抗IL-23p19抗体(リサンキズマブ等):難治CD向けの新たな選択肢
  • 抗α4β7インテグリン抗体(ベドリズマブ)
  • JAK阻害薬(ウパダシチニブ等):CDでも適応

生物学的製剤使用前には結核・B型肝炎のスクリーニングが必須です。

禁煙の重要性

喫煙はCDの発症・再燃・手術リスクを高め、生物学的製剤の効果も弱めます。禁煙はCDの経過を改善させる最も効果的な生活習慣の改善です。禁煙外来のご相談もお受けします。

長期罹患とがんサーベイランス

  • IBDの長期罹患(特に全大腸炎型UC・CD大腸病変)では大腸がんのリスクが上昇する。
  • 定期的な内視鏡によるサーベイランスが大腸がんの早期発見・予防に重要。
  • 5-ASA製剤の継続使用にはUC関連大腸がんのリスク低減効果があるとされる。
サーベイランス内視鏡の目安

全大腸炎型UCでは発症から8年以降に定期的なサーベイランス内視鏡(年1〜2回程度)が推奨されます。CD大腸病変も同様です。色素内視鏡の散布やターゲット生検が有効です。リスクに応じて間隔を調整しますのでご相談ください。

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  • IBD関連大腸がんのリスク因子:罹患範囲が広い・罹患期間が長い・炎症が強い・原発性硬化性胆管炎(PSC)の合併・大腸がんの家族歴など。
  • 散発性大腸がんと比べ、IBD関連大腸がんは多発・平坦型病変として発生しやすく発見が難しいことがあります。専門医による丁寧な内視鏡観察が重要です。
  • 2024年に大腸癌研究会から「炎症性腸疾患関連消化管腫瘍診療ガイドライン2024年版」が発刊され、サーベイランス・診断・治療の指針が整備されました。
  • 5-ASA製剤の継続は、消炎作用に加えてUC関連大腸がんのリスク低減効果があるとされています(IBD診療ガイドライン2020 CQ3-2)。寛解期でも中断せず継続することが推奨されます。

当院の方針・連携

  • 早期診断と適切な治療導入を優先します。
  • 重症・難治・入院・小腸精査が必要な場合は専門施設へ速やかに紹介します。
  • 生活・学業・就労・妊娠計画も踏まえた個別最適化した長期フォローを行います。
  • 指定難病の医療費助成制度(特定医療費)の申請書類(臨床調査個人票)の作成をサポートします。
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  • 症状・採血・便検査・内視鏡を総合評価して早期診断を目指します。
  • 重症/難治例・入院が必要な場合・小腸カメラやCT等が必要な場合は、適切な医療機関へ速やかに紹介します。
  • 治療は患者さんのライフスタイル・仕事・妊娠計画・副作用への懸念などを踏まえて個別に調整し、長期的にフォローします。
  • UCおよびCDは指定難病(特定疾患)に指定されており、一定基準を満たすと医療費の自己負担が軽減されます。診断確定後に申請が必要で、当院で書類作成を支援します。

よくあるご質問

症状が落ち着いている時も治療を続ける必要がありますか?

粘膜治癒を維持することが再燃・入院・手術・がん化のリスクを下げるために重要です。症状がなくても炎症が残っている「潜在的活動期」があり、薬を自己判断でやめると再燃しやすくなります。主治医の指示に沿って継続治療と定期評価を行いましょう。

ステロイドは長期に続けても大丈夫ですか?

維持療法にステロイドは使用しません。ステロイドは寛解導入(炎症を鎮める目的)に短期で使い、その後は5-ASAや生物学的製剤・分子標的薬などへ切り替えます。長期使用は骨粗しょう症・感染症・糖尿病・白内障などの副作用リスクがあります。

IBDになると大腸がんのリスクが高いのですか?

長期罹患・罹患範囲が広い(全大腸炎型など)場合、大腸がんのリスクが一般より高くなることが知られています。ただし定期的なサーベイランス内視鏡と5-ASA製剤の継続によりリスクを下げ、早期発見が可能です。発症から8年以降は定期的な内視鏡フォローが推奨されます。

食事に気をつけることはありますか?

UCでは活動期に消化しやすい食事(低残渣食)が一般的に推奨されます。CDでは脂肪分を抑えた食事や栄養療法(成分栄養剤)が炎症を鎮めるのに役立ちます。「絶対に食べてはいけないもの」は一律には決まっておらず個人差があります。食事で体調が悪化するものを避けつつ、必要な栄養をしっかりとることが大切です。栄養士への相談もお受けします。

妊娠・授乳は可能ですか?

寛解期であれば多くの場合妊娠が可能です。また多くの薬は専門医の管理下で継続可能です(薬の種類によって授乳の可否が異なります)。妊娠中の再燃は母子ともにリスクがあるため、寛解を維持した状態での妊娠が望ましいとされています。妊娠を考えている方は早めにご相談ください。

学校や仕事との両立が不安です

病勢を安定させることが最優先です。生物学的製剤の自己注射・内服薬への切り替え、通院間隔の調整など、学業・就労との両立を支援する治療計画を一緒に考えます。また指定難病の医療費助成(特定医療費)により、高額な生物学的製剤等の費用負担が軽減されます。

指定難病の医療費助成とはどのような制度ですか?

潰瘍性大腸炎・クローン病はともに指定難病に指定されており、医療費助成(特定医療費)が受けられます。一定の基準を満たす場合、医療費の自己負担が軽減されます。診断確定後に申請が必要で、当院で診断書(臨床調査個人票)の作成をサポートします。まずはご相談ください。

NSAIDs(痛み止め・解熱剤)は使っても大丈夫ですか?

NSAIDs(ロキソプロフェン・イブプロフェン等)はIBDの再燃の原因となることがあるため、できるだけ避けることが推奨されています。発熱や痛みへの対処が必要な場合はアセトアミノフェンが比較的安全です。常用する必要がある場合は事前にご相談ください。

クローン病で喫煙を続けていますが、影響はありますか?

喫煙はCDの発症リスクを高め、再燃しやすくし、手術が必要になる確率を上げることが示されています。また、生物学的製剤の効果も低下させます。禁煙はCDの経過を改善させる最も効果的な生活習慣の改善です。禁煙外来への紹介もできますので、ぜひご相談ください。

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