痛風・高尿酸血症
痛風・高尿酸血症
痛風は血中の尿酸値が高い状態(高尿酸血症)が続き、関節に尿酸の結晶が沈着して起こる激しい関節炎の発作です。
当院では急性期の痛みの速やかな鎮静と、再発予防のための尿酸値コントロールを、生活習慣の改善と薬物療法の両輪で行います。
まずはここだけ押さえればOK
- 痛風は尿酸値が高い状態が続くことで起こる関節炎です。
- 発作(急な激しい関節痛)は早めの治療で楽になります。
- 再発を防ぐには尿酸値を目標まで下げて維持することが大切。
- 無症候でも尿酸値が高いままだと腎臓や血管に影響します。
- 薬は自己判断で中止しないでください(発作を誘発することがあります)。
以下に当てはまる方はご相談ください
※ 痛風は男性に多い病気です(女性は閉経後に増加)。症状がなくても腎臓や血管への影響が進むことがあります。
痛風とは/なぜ起きる?/診断のポイント
「風が吹いても痛い」と表現されるほどの急性関節炎で、最も多い部位は足の親指の付け根(第一中足趾節関節)です。足の甲・かかと・アキレス腱・膝・肘・手首など体の各所にも起こり得ます。
原因は高尿酸血症。尿酸はDNAなどの核酸(プリン体)が分解されてできる最終産物で、産生が増えたり・排泄が減ったりすることで血液中に蓄積し、関節や腎臓に結晶として沈着します。
高尿酸血症の原因
尿酸が増える・排泄されにくい要因
- 産生が増える:過食・アルコール(特にビール・蒸留酒の多量飲み)・果糖の多い飲料(清涼飲料・エナジードリンク)・激しい運動・遺伝的体質
- 排泄が減る:腎機能の低下・脱水・利尿薬・アルコール・インスリン抵抗性など
- その両方が重なる混合型が最も多い
合併しやすい病態
- 腎機能障害(痛風腎)・尿路結石
- 高血圧・脂質異常症・糖尿病・肥満(メタボリックシンドローム)
- 動脈硬化性疾患(心筋梗塞・脳梗塞など)のリスク上昇が示唆されている
診断の目安
| 項目 | 基準・目安 | ポイント |
|---|---|---|
| 高尿酸血症 | 血清尿酸値(SUA) ≥ 7.0 mg/dL | 採血で診断。反復測定で確認することが重要 |
| 痛風発作 | 典型的な急性関節炎(足の親指など) | 関節液を穿刺して尿酸結晶を確認することで確定診断。関節超音波も有用 |
| 合併症の評価 | 腎機能・尿路結石・痛風結節の有無 | 超音波検査・CTや採血で尿酸塩沈着・腎障害を評価 |
※ 痛風発作中は尿酸値が一時的に低く出ることがあります。発作が落ち着いた時期に再評価します。
治療の考え方(急性期と再発予防)
発作(急性期)の治療
- 速やかな消炎・鎮痛:NSAIDs(痛み止め)を大量・短期間投与する方法が基本。コルヒチン、または腎機能に問題がある場合などはステロイドの短期投与を検討します。
- 安静・冷却:患部を冷やし、できるだけ動かさず安静に。心臓より高い位置に保つと楽になることがあります。
- 水分をしっかり摂る:脱水は発作を悪化させます。アルコールは厳禁です。
- この段階では尿酸を下げる薬を新たに始めません。すでに内服している方は中断せず継続してください(急な中止・再開は発作を誘発します)。
※ 再発を繰り返す方や、尿酸を下げる薬の開始直後は、発作予防のために少量のコルヒチンやNSAIDsを短期〜中期間併用することがあります(ガイドライン推奨)。
再発予防(慢性期の尿酸コントロール)
- 再発を防ぐには尿酸値を目標まで下げて維持することが最も重要です。
- 薬は少量から始めて体質に合わせて調整します。急に下げると発作を誘発するため、3〜6か月かけて徐々に下げていきます。
- 開始直後は発作が起きやすいため予防薬を一定期間併用します。焦らず継続することが大切です。
薬の種類について詳しく見る
尿酸を下げる薬(尿酸降下薬)
- 産生を抑える薬(尿酸生成抑制薬):アロプリノール・フェブキソスタット・トピロキソスタット。腎機能が低下している方にも使いやすいものがあります。
- 排泄を促す薬(尿酸排泄促進薬):ベンズブロマロン・ドチヌラドなど。尿路結石の既往や肝機能障害がある方は使いにくいことがあります(ベンズブロマロンは開始後6か月間、毎月肝機能検査が必要)。
- 尿酸のタイプ(産生過剰型・排泄低下型・混合型)や腎機能・合併症に合わせて選択します。
薬を始める目安(後述の治療目標テーブルも参照)
- 痛風発作の既往がある
- 尿路結石・痛風結節・腎障害などの合併がある
- 無症候でも尿酸値が高値で合併症リスクが高い場合
※ 開始時は発作予防にコルヒチン等を短期併用。腎機能・薬剤相互作用(例:ワルファリンとの相互作用あり)を確認します。
※ 尿酸排泄促進薬を使う場合は尿をアルカリ化する薬(クエン酸製剤など)を併用することがあります。
治療目標と薬を始める基準(高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版)
尿酸値の治療目標
| 病態 | 目標尿酸値(SUA) | 理由・ポイント |
|---|---|---|
| 痛風発作の既往あり・再発予防 | < 6.0 mg/dL | 結晶が溶ける閾値を下回ることで再発を防ぐ。維持が重要 |
| 痛風結節がある | < 5.0 mg/dLを目標として考慮 | より厳格に下げることで結節の縮小を促す(CQ4推奨) |
| 無症候性高尿酸血症 | < 7.0 mg/dLを目安(まず生活改善から) | 腎・血管合併症の予防。薬を使う場合は<6.0 mg/dLを目標とする |
無症候性高尿酸血症への薬物療法の開始目安
| 状況 | 薬を考慮する尿酸値の目安 | ポイント |
|---|---|---|
| 腎障害・尿路結石・高血圧・糖尿病・脂質異常症・虚血性心疾患などの合併症がある | ≥ 8.0 mg/dL | 合併症がこれらの疾患をさらに悪化させる可能性があるため、早めの介入を検討 |
| 上記の合併症がない | ≥ 9.0 mg/dL | まずは生活習慣の改善を3か月程度試み、改善しない場合に薬を検討 |
※ これらはあくまで目安です。痛風の家族歴・尿酸値の高さ・生活習慣の改善状況などを総合的に判断します。無症候でも値が非常に高い場合(9 mg/dL以上)は年間約5%が痛風発作を起こすとの報告があります。
※ 痛風発作の既往がある場合(=症候性)は上記の基準によらず、発作後の安定期に尿酸降下薬を開始します。
生活・食事のポイント(まずここから)
食事
- プリン体の多い食品は頻度と量を控えめに。レバー・白子・あん肝・干物・内臓肉・魚卵などは「たまに・少量」で。
- 果糖の多い飲料(清涼飲料・果汁飲料・エナジードリンク)は特に控える。果糖は尿酸産生を促進します。
- 野菜・海藻・きのこ・豆類・低脂肪乳製品を増やす。乳製品は尿酸排泄を促す効果が示されています。
- 過食・肥満を避ける。体重を5〜10%減らすだけでも尿酸値が下がりやすくなります。
飲酒・水分・運動
- 飲酒は控えめに。アルコール自体が尿酸産生を増やし、排泄も妨げます。種類を問わず節酒が基本。
- 水分は1日2L程度(尿量2L/日)を目安に。尿酸の排泄を促し、尿路結石の予防にもなります。腎臓・心臓に病気のある方は医師の指示に従ってください。
- 無酸素運動・激しすぎる運動はNG。ウォーキングなどの有酸素運動を無理のない範囲で継続しましょう。
- 十分な睡眠・ストレス管理も尿酸値の安定に有効です。
プリン体の多い食品・少ない食品の目安
| 区分(100gあたりの目安) | 食品例 | 食べ方のコツ |
|---|---|---|
| 多い(概ね200 mg以上) | レバー・白子・あん肝・煮干し・干し椎茸・魚卵・内臓肉 | 「ご褒美」程度に少量・たまに。汁は飲まないと減らせます |
| 中等量(100〜200 mg) | 赤身肉・青魚(マグロ・カツオ)・一部の魚介類 | 量を決めて主菜に。野菜・乳製品と組み合わせる |
| 少ない(100 mg未満) | 野菜・海藻・きのこ・乳製品・卵・ご飯・麺・パン | 積極的に活用。主食はこれらで十分なプリン体管理ができます |
※ 具体の数値は食品の種類・部位・調理法で変わります。全体の頻度と総量を意識することが大切です。
よくあるご質問
発作はどのくらい続きますか?
適切な治療を早めに始めれば数日で楽になることが多いです。未治療・再燃の場合は1〜2週間続くこともあります。発作が起きたら早めに受診してください。
発作が治まれば薬はやめていい?
自己判断でやめると再発を繰り返しやすくなります。目標の尿酸値を維持し続けることが再発予防の要です。減量・中止する場合は必ず医師に相談してください。
ビールだけダメ?焼酎ならいい?
ビールはプリン体を多く含む一方、アルコール自体が尿酸の産生を増やし排泄も妨げます。そのため焼酎・ワイン・日本酒も同様に注意が必要です。種類にかかわらず節酒・禁酒が基本です。
痛風発作中に尿酸を下げる薬を始める?
原則として急性期(発作中)には新規で開始しません。急な尿酸値の変動が発作を誘発・延長させることがあるためです。すでに内服中の方は中断せず継続してください。発作が落ち着いてから開始を検討します。
無症候性(症状がない)でも治療が必要ですか?
症状がなくても、尿酸値が高いままだと腎臓・血管・尿路への影響が進む可能性があります。まずは生活習慣の改善を3か月程度試み、それでも改善しない場合や合併症がある場合は薬の使用を検討します。目安は合併症があれば8 mg/dL以上、合併症がなければ9 mg/dL以上から薬を考慮します。
水分をたくさん飲めば治りますか?
水分摂取(1日2L目安)は尿酸の排泄を助け、尿路結石の予防にも有効な重要な生活習慣です。ただし水分だけで十分に尿酸が下がらないケースも多く、食事・体重管理・禁酒との組み合わせが大切です。値が高い場合は薬物療法も検討します。
