糖尿病
糖尿病(1型・2型)
糖尿病は血糖値が慢性的に高い状態が続き、目・腎臓・神経をはじめ全身の血管を傷める病気です。初期は無症状でも進行するため、定期的な評価と継続的な管理が大切です。
当院では生活習慣改善と経口薬を中心に治療し、必要なケースは総合病院と連携して安全で質の高い医療をご提供します。
まずはここだけ押さえればOK
- 糖尿病は血糖が高い状態が続く病気です。初期は自覚症状がありません。
- 放置すると目(網膜症)・腎臓(腎症)・神経(神経障害)や心筋梗塞・脳梗塞のリスクが上がります。
- 治療の基本は食事・運動・体重管理。まずここから始めます。
- 目標はHbA1cを7.0%未満に安全に保つことが基本(個人の状態で調整します)。
- 難しいケースや注射薬が必要な場合は総合病院と連携して治療します。
この症状があればご相談ください
※ 初期は無症状のまま進行することが多いです。健診で数値の異常を指摘された場合は早めの評価を。
糖尿病とは/1型と2型/診断のポイント
血糖を下げるホルモンインスリンの「分泌が不足している・効きが悪い」ことで慢性的な高血糖になる病気です。高血糖が続くと細小血管(網膜・腎臓・神経)と大血管(心筋梗塞・脳梗塞・足の動脈硬化)の合併症リスクが上がります。
放置すると日常生活やQOLに大きく影響しますが、早期発見・継続的な治療で合併症は大きく防ぐことができます。
1型と2型の違い
| 項目 | 1型糖尿病 | 2型糖尿病 |
|---|---|---|
| 主な仕組み | 自己免疫等で膵臓のβ細胞が破壊されインスリンがほとんど出なくなる | インスリンの分泌低下と効きの悪さ(抵抗性)が重なる(遺伝+生活習慣) |
| 発症の仕方 | 年齢を問わず、急激〜ゆっくりと発症 | 成人に多く、徐々に進行する |
| 治療の基本 | インスリン注射が必須 | 食事・運動療法+経口薬や注射薬、必要に応じてインスリン |
| 典型的な症状 | 強い口渇・多飲多尿・急激な体重減少。重症では意識障害(ケトアシドーシス) | 初期は無症状のことが多い。だるさ・食後の眠気、合併症が出てから気づくことも |
※ 当院では1型糖尿病が疑われる場合は総合病院へ速やかに紹介し、専門的な治療を受けていただきます。
診断と検査
主な診断基準(糖尿病診療ガイドライン2024)
- 空腹時血糖値 ≥ 126 mg/dL
- 随時血糖値 ≥ 200 mg/dL(典型症状を伴う場合)
- 75gブドウ糖負荷試験(OGTT) 2時間値 ≥ 200 mg/dL
- HbA1c(NGSP値) ≥ 6.5%
※ 同日に複数の基準を満たすか、別の日に再検査して確認します。
※ HbA1cだけの反復検査のみで糖尿病と診断することはできません。
※ 75gOGTTは当院では実施していません。必要な場合は連携病院にご紹介します。
初期評価・定期検査の目安
- 採血:HbA1c・空腹時血糖・腎機能(eGFR)・脂質・肝機能・尿酸
- 尿検査:尿アルブミン(腎症の早期発見)・尿糖・ケトン体(必要時)
- 眼底検査(眼科へ)・神経評価・足の動脈の検査(ABI)など(必要時)
- 血圧・体重・腹囲、生活習慣の確認
当院の治療体制(連携の方針)
- 当院は糖尿病専門医療機関ではありません。外来では主に食事・運動療法と経口薬による管理を担当します。
- 1型糖尿病が疑われる場合、インスリン導入が必要な場合、コントロールが難しい場合(HbA1c 9.0%以上が続くなど)は総合病院へご紹介します。
- 総合病院でインスリン導入や病型確定後に逆紹介があれば、当院での外来継続管理(インスリン継続を含む)が可能です。
- 75gブドウ糖負荷試験(OGTT)など一部の負荷試験は当院では実施していません。必要時は連携病院をご紹介します。
治療目標(血糖コントロールの目安)
| 対象 | HbA1c目標 | ポイント・対応する血糖値の目安 |
|---|---|---|
| 多くの方(合併症予防の基本) | < 7.0% | 空腹時血糖130 mg/dL未満、食後2時間血糖180 mg/dL未満が目安 |
| より厳格に目指せる方 低血糖リスクが低く、食事・運動だけで届く場合など |
< 6.0% | 空腹時血糖110 mg/dL未満、食後2時間血糖140 mg/dL未満が目安。低血糖・体重増加がない範囲で |
| 治療の強化が難しい方 低血糖リスクが高い・高齢・併存疾患あり など |
< 8.0% | この数値を超え続ける場合は治療見直しを検討。低血糖の回避を最優先に個別化 |
※ 目標は年齢・罹病期間・合併症・低血糖リスク・サポート体制などを考慮して個別に設定します(糖尿病診療ガイドライン2024)。血糖だけでなく血圧・脂質・禁煙・体重管理を含めた総合的なリスク低減が大切です。
治療(生活習慣+お薬)
生活習慣の改善(まずここから)
- 食事:食事の総カロリーを適正化し、主食・主菜・副菜をバランスよく。野菜・海藻・きのこ類(食物繊維が豊富)から先に食べると食後の血糖上昇を緩やかにできます。過体重・肥満のある方は特にエネルギー制限が有効です。
- 体重管理:5〜10%の減量で血糖・血圧・脂質が改善しやすくなります。
- 運動:ウォーキングなどの有酸素運動を週150分程度。軽い筋トレも合わせると効果的。座ったままの時間を減らすことも意識しましょう。
- 睡眠・ストレス管理:睡眠不足や慢性的なストレスは血糖を上げる要因になります。
- 禁煙・節酒:喫煙は動脈硬化を促進します。飲酒は低血糖を起こすことがあります。どちらも合併症リスクを高めます。
お薬(当院で扱う主な薬の考え方)
- 血糖の状態・体質・合併症のリスクに合わせて、無理のない薬を組み合わせます。
- 低血糖や体重増加を避けながら、目標HbA1cを安全に目指す方針です。
- 心臓・腎臓に病気がある方には心腎保護効果がある薬(SGLT2阻害薬・GLP-1受容体作動薬)を積極的に検討します。
- 注射薬(GLP-1受容体作動薬・インスリン)の導入が必要な場合は総合病院と連携します。
薬の種類について詳しく見る
- メトホルミン(ビグアナイド系):肝臓での糖産生を抑える。体重が増えにくく、2型糖尿病の基本薬のひとつ。腎機能が低下した方や飲酒量が多い方は注意が必要。
- SGLT2阻害薬:余分な糖を尿と一緒に排出する。体重・血圧の改善効果もあり。心不全・糖尿病性腎症に対する保護効果が確立されており、これらを合併する方に積極的に使用(eGFR 15未満では新規開始しない)。脱水・尿路感染・シックデイ時の注意が必要。
- GLP-1受容体作動薬(注射薬・一部経口薬あり):食欲を抑えインスリン分泌を増やす。体重減少効果があり、肥満を伴う方に有効。心血管・腎保護効果も示されている。注射薬の導入は総合病院と連携。
- GIP/GLP-1受容体作動薬(チルゼパチドなど):GLP-1に加えGIPにも作用する新しいタイプ。体重減少・血糖改善効果が高い(糖尿病治療ガイド2024より追加)。
- DPP-4阻害薬:食後の血糖上昇を抑える。低血糖が起きにくく使いやすい。
- α-グルコシダーゼ阻害薬:食後の血糖上昇を緩やかにする。胃腸の不快感が出ることがある。
- イメグリミン:インスリン分泌促進と抵抗性改善の両面に働く比較的新しい経口薬。
- SU薬・速効型分泌促進薬(グリニド薬):インスリン分泌を促進。効果は強いが低血糖・体重増加に注意が必要。
- チアゾリジン薬:インスリン抵抗性を改善。浮腫・体重増加に留意。
※ HbA1cが9.0%以上が続く場合はインスリン治療の導入を積極的に検討します。導入は総合病院で安全に行い、安定後は当院での継続管理が可能です。
合併症と定期チェック
3大合併症(細小血管障害)
- 糖尿病性神経障害:手足のしびれ・感覚が鈍くなる・足の傷に気づきにくくなる。最も早期から現れやすい。
- 糖尿病性網膜症:視力低下〜失明のリスク。自覚症状がないまま進行することがあるため定期的な眼科受診が必須。
- 糖尿病性腎症:尿アルブミン増加→腎機能の低下→透析のリスク。進展予防に血糖・血圧・SGLT2阻害薬が有効。
大血管障害
- 心筋梗塞・狭心症、脳梗塞(アテローム血栓性)、足の動脈硬化(末梢動脈疾患)
- 血圧・脂質・禁煙の管理が合わさって初めて効果的に予防できます
定期フォローの目安
- HbA1c:1〜3か月ごと
- 尿アルブミン(腎症チェック):年1回以上
- 眼底検査(眼科):年1回(病状で調整)
- フットケア(足の観察):毎回の受診時に確認
- 腎機能(eGFR):定期的に(薬の調整にも影響します)
よくあるご質問
健診で「血糖が少し高い」だけでも受診した方が良い?
はい、ぜひ早めにご相談ください。「境界型(糖尿病予備群)」の段階から生活改善を始めると、2型糖尿病の発症を大きく抑えることができます(糖尿病診療ガイドライン2024で強く推奨)。
「食後だけ高い(かくれ糖尿病)」はどう評価しますか?
当院では食後血糖・HbA1c・尿検査などで評価します。75gブドウ糖負荷試験(OGTT)が必要な場合は連携病院へご紹介します。食後高血糖だけ高い場合も動脈硬化リスクがあり、見過ごさないことが大切です。
1型糖尿病が疑わしい場合は?
総合病院へ速やかにご紹介し、精密検査(GAD抗体など)とインスリン導入を行います。1型の中でも「緩徐進行型(SPIDDM)」は初期に2型と間違われやすいため注意が必要です。
インスリンが必要と言われたら?
インスリン導入は総合病院で安全に行います。安定した後は当院での継続管理も可能です。インスリンは最終手段ではなく、血糖コントロールが難しい時期に必要な治療です。早めに使うことで合併症を防ぐ効果があります。
SGLT2阻害薬やGLP-1受容体作動薬はどんな人に向いていますか?
SGLT2阻害薬は、心不全・慢性腎臓病を合併している方に特に有効で、血糖低下に加えて心臓・腎臓を守る効果が確立されています。GLP-1受容体作動薬(注射または一部経口薬)は、肥満を伴う方や心血管疾患がある方に特に効果的です。
薬なしで血糖を下げることはできますか?
食事・運動・体重管理などの生活習慣改善で血糖が下がるケースもあります。ただし、HbA1cが高い状態が続いている場合や合併症リスクが高い場合は、薬での管理も重要です。無理なく続けられる計画を一緒に考えます。
